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【Bayspair Japan合同会社 池田和哉様、長坂理紗子様インタビュー】「三井リンクラボ新木場2を舞台に、独自のゲノム編集技術を利用して新たな細胞ビジネスを実現したい」 

Bayspair Japan 合同会社
Bayspair Japan(ベイスペアジャパン)合同会社は、米国で誕生したバイオテックスタートアップのBayspair Inc.の日本法人です。現在は独自のゲノム編集技術を利用して「ゲノム編集サービス」と「ゲノム編集iPS細胞バンク」を主力事業としており、高額なゲノム編集技術のコストと難易度を抑え、多くのユーザーにとって利用しやすいゲノム編集技術の提供に挑戦しています。今回は、米国本社の創業者であり、現CEOの池田和哉様と、日本法人代表を務める長坂理紗子様に、事業内容や今後の展望などについてお聞きしました。

スタンフォード大学発のゲノム編集技術をベースに米国で誕生  

まずは御社の会社沿革のご説明をお願い致します。 

池田様:当社は、スタンフォード大学で開発された「Scarless Editing*1」という新規のゲノム編集技術の産業応用を目指して設立された、Bayspair Inc.(米国・カリフォルニア州)の日本法人です。わたし自身は、もともと日本の製薬企業で細胞治療を研究していたのですが、3年前にBayspair Inc.を創業しました。現在も本社および研究所の主機能は米国にあり(注:この日は米国からビデオ会議でご参加頂きました)、さらに昨年新たに日本法人として、当社を設立しました。 

*1 Scarless Editingとは、ゲノム編集により導入される選択マーカーや再切断変異防止配列などを完全に除去し、編集の痕跡をゲノムに残さない技術です。従来法では避けられない余分な配列が遺伝子発現やスプライシングに予期せぬ影響を与える可能性を回避できるため、疾患変異の精密な解析や、医療応用・安全性が求められる研究において極めて有用です。  

 長坂様:わたしも、もともとは製薬企業の研究員でした。創薬の現場で日々研究と向き合う中で、ゲノム編集の有用性と可能性を実感し、「ゲノム編集技術の応用範囲の拡大に貢献したい」という思いから、当社の設立に参画しました。 

貴社の事業内容についてもご紹介ください。 

池田様:当社の主力事業は「ゲノム編集受託サービス」と「ヒトiPS細胞をベースにしたゲノム編集細胞の提供」になります。前者については、主に製薬企業やアカデミアなどから依頼を受けて、ヒトiPS細胞やES細胞などの細胞のゲノム編集を代行するサービスです。当社独自のゲノム編集技術を用いることで、難易度とともにコストの削減も実現しており、安価で利用できるゲノム編集サービスとなっています。後者については、当社が用意した細胞バンクの中から顧客がほしいゲノム編集細胞を選び、購入していただくサービスです。オーダーメイドのゲノム編集よりも安価な価格で利用できるのが利点です。当社としては、皆様のリクエストに応じてラインナップを順次拡充させて、いずれはゲノム編集細胞の巨大ライブラリを構築したいと考えています。なお当社のiPS細胞は、すべて株式会社リプロセルから購入した商用利用可能な細胞です。 

「細胞の巨大ライブラリ」というのは興味深いチャレンジですね。

池田様:オーダーメイドによるゲノム編集細胞の作成は、どうしてもある程度コストがかかります。そこで当社は、ひとつのゲノム編集細胞を複数の顧客が利用できる体制にすることで、コストの削減に挑戦しています。当社のゲノム編集細胞を見てもらい、「当社の技術でどんな細胞が作れるのか?」を企業やアカデミアの皆様に知ってもらいたいという事情もあります。お蔭様で多くのお客様から高い評価を頂いており、細胞治療から抗体産生まで、当社のゲノム編集技術に関して様々な用途でのご相談を頂いています。 

あらゆるゲノム配列の変更を簡単に行うことができる独自のゲノム編集技術だからこそ「柔軟な契約にも対応可能」 

業界における「貴社の強み」についてもお聞かせください。 

池田様:当社の強みは、独自の革新的な技術によって、他社では実現できないことを可能にしている点にあります。
 私たちのゲノム編集技術は、大きく2つの要素から構成されています。ひとつは、CRISPR/Cas9を必要としない独自ヌクレアーゼ、もうひとつは、CRISPR/Cas9では困難とされてきたゲノムの精密な書き換えを実現するScarless Editing 技術です。 
私たちはこれらを活用し、「CRISPR/Cas9にできることは安価に、CRISPR/Cas9にできないことはいとも簡単に」というコンセプトのもとで事業展開を行っています。

まず、独自ヌクレアーゼは、ノックアウトやノックインなどCRISPR/Cas9と同等の基本機能を備えながら、編集可能な部位が限定されているという特徴があります。一見不利に思えるこの性質も、実は非常に有用です。ヒトゲノムには約30億塩基対もの情報が存在しますが、その中の1箇所だけを正確に編集する場合、この編集可能な部位が限定されている特性により不要な部位を誤って編集してしまう「オフターゲット効果」のリスクを減らすことができます。
さらにこのヌクレアーゼは完全に当社が開発したものであり、CRISPR/Cas9のように複雑な知的財産権に縛られることはありません。当社独自の裁量でライセンス条件を設定できるため、「契約金やマイルストン不要で成果に応じたロイヤリティ型」から「契約金一括型」まで、柔軟なライセンス提供が可能です。 
 次に、Scarless Editing 技術では、従来のCRISPRツールが持っていた「ガイドRNAの標的近傍しか編集できない」という根本的な制約を克服しました。これにより、ゲノム上のほぼすべての領域に対して、高効率かつ自由自在な書き換えが実現可能となりました。この技術は、編集部位が限られる当社独自ヌクレアーゼとの相性も抜群です。 

例えば、ノックアウトのように数千〜数万塩基の中のいずれかを壊せばよい場合は、既存技術でも十分に対応できます。しかし、1塩基の置換やタグの導入、レポーター化のように「狙った箇所だけを正確に編集」しなければならないケースでは、高効率かつ高選択性のガイドRNA標的が見つからないことが多く、既存のCRISPR/Cas9では困難でした。 
Scarless Editing 技術を用いれば、こうした精密編集も極めて容易になります。これにより、非翻訳領域の編集や、gene saturation mapping、複数SNPの同時編集といった、従来は現実的でなかった研究が可能になります。たとえば、GWAS解析で得られた多数の疾患関連多型について、その病態メカニズムを直接検証する研究にも活用できます。 

また、Scarless Editingを利用したレポーターライン作製技術の応用で、任意のタイミングで任意の遺伝子を発現させる制御も可能です。これにより、精密な薬剤スクリーニングや細胞機能評価に最適な細胞を構築できるだけでなく、iPS細胞由来の治療製品に特性を追加することも可能になります。たとえば、生産効率の向上、免疫回避、薬効増強、シャットダウン可能な自殺遺伝子の導入などを、まるで細胞という“マイクロマシン”にプログラムを書き込むように実現できます。 

日本法人の役割についてもお聞かせください。

長坂様:役割分担としては、ゲノム編集技術の研究開発は米国の拠点が担当し、実際の細胞製造は日本の拠点が担当します。優れた細胞培養技術者が多く、何より品質管理・物流における丁寧さもレベルが高いと考えます。新技術の開発は米国のラボで行い、そこで誕生した技術を確実にものづくりに落とし込むのが、日本ラボの役割になります。 

研究の輪に加わることで当社のゲノム編集技術を利用した「細胞治療」の実現にも貢献したい 

「三井リンクラボ新木場2」を選んだ理由をお聞かせください。

長坂様:日本にラボを開設するにあたっては、物流など立地条件が優れていること、交通アクセスが良好であること、建屋がバイオセーフティレベルに対応していること、この3条件がポイントでした。そこで実際に、関西も含めて様々な場所について検討を重ねた結果、この3条件に合致する三井リンクラボ新木場2に入居させて頂きました。 

特に空港や都心部との交通アクセスが良好なのは、国内外の顧客との連携をスムーズに行うという点でも、大きな利点だと思います。新木場周辺は運送会社の拠点も多く、かなりフレキシブルに対応してもらえるのも素晴らしいですね。バイオセーフティレベルについても、地域によっては細胞材料を取り扱うことがNGの場合もありますが、三井リンクラボ新木場2はBSL2/P2対応可能であるのも、大きなポイントでした。 

池田様:わたしが驚いたのは「最初の相談から2カ月後にはラボを開設できた」ことですね。ラボのご担当者が専門知識を持ち、かつ当社の要望に対しても「規則だから対応できません」ではなく、柔軟にご検討頂き、かつロジカルに物事が進行したおかげで、極めて短期間での入居が実現しました。そこは他のラボとの差を感じます。 

最後に貴社の「今後の展望」についてお聞かせください。 

池田様:当社の技術の本質的な優位性を明確に伝えるには、単なる説明ではなく、実際の成果を通じた訴求が重要だと考えています。そこで私たちは、ゲノム編集済みiPS細胞による大規模ライブラリの迅速な構築と、研究用途向けゲノム編集サービスの提供を通じて、国内外の企業や研究機関を積極的に支援しています。これらの取り組みによって、当社の技術がいかに柔軟かつ高精度なゲノム編集を可能にするかを、実体験として広くご理解いただけると確信しています。 

また、ゲノム編集技術の最終的な社会実装の一つとして、「細胞治療」の実現があります。当社はゲノム編集に特化した技術を強みとする一方で、iPS細胞の臨床応用に不可欠な分化・生産のプラットフォーム技術は持ち合わせていません。したがって、これらの技術をお持ちのアカデミアや企業の皆様との連携・協業は不可欠と考えています。まずは研究ツール事業を通じて、当社のゲノム編集技術の実力を広く体感いただき、その技術がいかに次の研究や治療戦略の土台になり得るかを実感していただきたいと考えています。そして、私たち自身もその研究の輪に積極的に参画し、ゲノム編集を基盤とした次世代の細胞治療の実現に向けて貢献してまいります。

大変興味深くお話をお伺いさせて頂きました。皆様の今後の事業のご成功をご祈念申し上げます。本日はありがとうございました。

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