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【株式会社digzyme 渡来直生様、和泉賢様インタビュー】 「葛西ラボの設備は素晴らしく、見学者から褒めていただくことも多い。今後も積極的に活用したい」

株式会社digzyme
株式会社digzyme (ディグザイム)は、バイオインフォマティクス(生命科学と情報工学の融合分野)を用いて、産業用途に適した「酵素」を効率的に設計し、かつ速やかに大量生産まで繋げる技術開発を目指して誕生した、東京工業大学発のスタートアップです。今回は渡来直生様 (Co-founder、代表取締役CEO)と和泉賢様 (執行役員COO)のお二人に、同社誕生の経緯から現在挑戦中の取り組み、三井リンクラボ葛西で実現したい未来像などについてお聞きしました。

オープンデータの中から必要な酵素を探索して最適化

まずは御社の事業内容について教えてください。

digzyme渡来様 :当社の事業は「酵素」です。具体的には、世の中に眠る膨大な量の生命科学に関する研究データを読み解き、顧客が必要とする産業用酵素を、効率的かつ迅速にデザインするというサービスを提供します。会社名は、英語の 「dig (掘る)」と「-zyme (酵素を示す接尾語)」の組み合わせです。現在は、オープンデータの中から有望な酵素の候補を探し出し、さらにAIを活用して機能を改良して、利用目的に合致する形に再設計したら、実際に合成して活性や生産性や安定性を検証し、量産までの道筋を確立するという事業に挑戦しています。他にも酵素開発コンサルティング業務を対応しています。

digzyme和泉様 :ただし、実際の生産プラントを自社で保有する予定はありません。当社の事業スタイルはファブレス(生産設備を持たず、外注先に製造委託するビジネスモデル)です。したがって「優れた酵素を量産するシステムの構築」までが我々の役割になります。

貴社の事業の独自性についてお聞かせください。

digzyme渡来様 :当社の独自性は「オープンデータを活用して、必要な酵素をインシリコで効率的にデザインする」点にあります。生命科学に関する様々な研究データは、日々世界中で収集・蓄積されています。わたし自身、博士時代は麹カビに関する研究で大量の遺伝子データをアップした経験から、日々蓄積される大量のデータを有効活用する方法はないのだろうか?と常々考えていました。中でも酵素は、様々な産業で利用されており、企業と共同研究を行う機会にも恵まれていたことから 「社会実装までの距離が近い」と感じていました。

digzyme和泉様 :さらに最近は、これまで酵素を利用してこなかった産業界でも、酵素の役割が注目され始めています。たとえば、化学業界ではプラスチックなどの石油由来製品を分解する酵素を求める動きが高まっています。こうしたトレンドについては、当社も積極的に挑戦するつもりです。一方で、食品や洗剤など、以前から酵素を利用している業界でも、当社の技術で新たな価値を生み出す余地は十分あると考えています。そこで当社としては、いまはまだ特定の産業領域は定めずに、酵素の持つ可能性を幅広く追求していくつもりです。

現在の事業展開において難しいところはありますか?

digzyme渡来様:そもそも「酵素」とはどういうものか、知っているようで、意外と知られていません。酵素を一言で説明すると 「触媒として機能するタンパク質」ですが、実際は今まで知らなかった多様な触媒機能を有しています。我々が発見した「樹脂を分解する酵素」も、元データを見ても、どこにもそんな機能は書いていませんでしたが、挑戦してみたら成功しました。そういう事例は沢山あります。酵素が持つ可能性を、もっと知ってもらうことが鍵ですね。
digzyme和泉様:実際に話してみると 「酵素で何ができるのかわからない」というお客様も多いですね。特にこれまで酵素とは無縁だった業界ほど、そういう傾向があります。一方で世界的に見ると、産業用酵素の需要は非常に大きく、酵素業界は圧倒的に売り手市場。世界的な業界最大手は、日本の酵素関連企業の売上高を全て足しても敵わないほどです。将来的には、我々は日本を代表する存在になりたいですね。

三井リンクラボ葛西は「まさにラボのための施設」

三井リンクラボ葛西に入居されたきっかけを教えてください。

digzyme渡来様:最初は投資家経由で知りました。起業した当初は、東京工業大学の共同利用室で研究していたのですが、研究が進むにつれて自前のラボを持つ必要性が出てきたことから、ラボやオフィスを探しているうちに、三井リンクラボ葛西にたどり着きました。入居の決め手となったのは、賃料と面積ですね。ラボ内の通信環境も整備されているし、建屋の構造もしっかりしている。そこは通常のオフィスビルとは全く異なるという印象です。

実際に入居して感じたラボの利点があれば教えてください。

digzyme渡来様:最初は投資家経由で知りました。起業した当初は、東京工業大学の共同利用室で研究していたのですが、研究が進むにつれて自前のラボを持つ必要性が出てきたことから、ラボやオフィスを探しているうちに、三井リンクラボ葛西にたどり着きました。入居の決め手となったのは、賃料と面積ですね。ラボ内の通信環境も整備されているし、建屋の構造もしっかりしている。そこは通常のオフィスビルとは全く異なるという印象です。

digzyme渡来様:「実際にモノを見てみたい」という要望も多く、三井リンクラボ葛西までご案内するのですが、誰もが 「とても立派な施設ですね」と驚いてくれます。バイオインフォマティクスという事業の特性上、メイン作業はスパコンで行うのですが、コンピュータの画面を見ても、外部の方はなかなか理解できません。だから、ラボに招待して実際の培養工程などを見学してもらうことも大切なのです。今後も積極的に見学客を招待したいですね。

今後は生産に向けた検討も葛西ラボで挑戦する予定

今後の目標や展望をお聞かせください。

digzyme渡来様:酵素の開発では、酵素自体が優れた機能を有しているだけでなく、効率的かつ低コストで生産できること、大量生産でも研究室の試作品と同等の品質や安定性を確保できることも重要です。その確認のためには、実際に何度も試作を繰り返す必要があります。そこで今後は、数十リッターサイズの中規模生産設備を葛西ラボに導入することで、量産時における安定性の検証まで、自社ラボで一気通貫に検証できる体制を立ち上げる予定です。
最終的には 「オープンデータから有効な酵素を作り上げて、製品として上市する」その最初の1例を、何としても達成したいですね。我々の技術は精密発酵にも有用であると考えています。実は世界的に見ても、精密発酵(特定遺伝子を挿入した微生物の発酵を利用して目的の物質を作成する技術)に成功している会社は、ほとんどないのが現状です。継続して技術開発を続けていき、精密発酵の事業化にも貢献していきたいです。リーダーシップを握ることで、いずれ将来的には「酵素といえばディグザイムだね」といわれる会社になりたいですね。
digzyme和泉様:三井リンクラボでの活動についても、今後は「横の連携」を広げていきたいですね。これまでは、あまり横のつながりを作る部分ができなかったのですが、今回の取材など、外部に対して我々の事業を知ってもらう機会を続けながら、さらに今後は、ヘルスケア系とかケミカル系とか環境系とか、バイオものづくりの人たちともつながりを作りたいですね。

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